2026年5月21日(木)から22日(金)に沖縄コンベンションセンター(沖縄県)において開催された第64回日本小児歯科学会大会にて、小児歯科学講座の窪山裕也レジデントが優秀発表賞およびSHOFU AWARDを受賞した。
受賞演題は「Glucocorticoid-induced intracellular Ca2+ signaling in odontoblasts: investigation of the mechanism of tooth pain and regulation of dentin formation induced by steroids」であった。
ステロイドの長期投与によって歯髄腔が狭窄することが報告されているが、その発生機序やステロイドが象牙芽細胞に及ぼす影響については、これまで十分に解明されていなかった。また、ステロイド長期投与患者では、象牙質知覚過敏症様の激しい歯痛(ステロイド由来歯痛)が生じることも報告されているが、その発症機序や病態は明らかになっておらず、有効な治療法も確立されていない。象牙芽細胞の細胞内Ca2+シグナルは、象牙質形成および象牙質痛の発生に重要な役割を果たすことが知られており、本学の生理学講座ではこれまで、その詳細な分子機構について研究を進めてきた。
本研究では、象牙芽細胞にグルココルチコイド受容体が発現し、その受容体のアゴニストであるデキサメタゾンが、細胞外からのCa2+流入および小胞体のイノシトール3リン酸(IP3)受容体を介したCa2+放出を誘発することを明らかにした。また、このCa2+放出にはホスホリパーゼCζによるIP3産生が関与する可能性が示された。さらに、デキサメタゾンはストア依存性Ca2+流入を増強し、増加した細胞内Ca2+はNa+-Ca2+交換体を介して細胞外へ排出されることが示唆された。一方で、デキサメタゾンは象牙質痛の発生に必要である象牙芽細胞の機械感受性には影響を与えなかった。また、象牙芽細胞による石灰化に対しては、低濃度では促進作用、高濃度では抑制作用を示した。
これらの結果から、グルココルチコイドによる細胞内Ca2+シグナルは歯髄腔狭窄に関与する可能性がある一方、ステロイド由来歯痛への関与は否定的であることが示唆された。本研究成果は、これまで不明であったステロイドの象牙芽細胞機能への影響を明らかにし、ステロイドによる歯髄腔狭窄の病態解明に向けた重要な知見となることが期待される。
