研究

単一細胞解析により頭蓋幹細胞Nicheで炎症と密接に関連する老化間葉細胞サブクラスターと加齢に関連した免疫細胞サブクラスターを同定しました。

 

●ポイント ●概要 ●研究の背景と経緯 ●研究の成果 ●論文情報 ●研究者プロフィール ●お問い合わせ先

ポイント

・年齢と解剖学的部位によって区別された頭蓋幹細胞Nicheの単一細胞トランスクリプトームアトラスを提示しました。
・遺伝子発現パターン、間葉細胞および免疫細胞サブセットの変化、細胞間コミュニケーションなど、老化進行中の頭蓋縫合の間質組織と頭蓋骨髄様組織の微小環境の複数の属性を明らかにしました。
・本研究の結果は頭蓋骨に関する生物学的意義の理解を深め、再生医療やアンチエイジングの分野に影響を与える可能性があります。

 

概要

東京歯科大学・生理学講座の黄地健仁助教は、姉妹校である四川大学華西口腔医学院のBo Li博士と頭蓋幹細胞Nicheの加齢変化に関する研究を9月8日(英国時間)付で、英国解剖学会の学会誌であるAging Cellに発表しました。

 

研究の背景と経緯

頭蓋顔面骨は頭蓋骨を構造的に支持し、脳組織を保護します。骨組織では、骨格幹細胞や間葉系幹細胞とその微小環境(Niche)に依存して一定の代謝が行われています。骨髄内の骨格幹細胞や間葉系幹細胞の血管周囲Nicheは、大腿骨でこれまでに多くの研究が実施され、複数のNiche因子が報告されています。一方、頭蓋骨に関しては、骨髄様組織に加えて、縫合の間質組織が頭蓋顔面骨の骨格幹細胞や間葉系幹細胞のNicheとして特定されています。しかし、単一細胞解像度での異なる複数の頭蓋幹細胞Nicheに関する包括的な研究はまだ発展の途中段階でした。さらに、老化や加齢に伴う頭蓋幹細胞Nicheおよび常在細胞の変化は未発見のままでした。

 

研究の成果

本研究では、単一細胞 RNA シーケンス (scRNA-seq) を介して、頭蓋幹細胞Nicheの加齢に伴う変化を調査し、炎症の影響による頭蓋骨髄様組織の微小環境の変化が示されました。さらに、再クラスタリングと擬似時間軌跡解析により、炎症と密接に関連している可能性がある老化間葉細胞サブクラスターといくつかの加齢に関連した免疫細胞サブクラスターを同定しました。最後に、加齢に伴う発現差のある遺伝子と細胞間の相互連関が分析され、潜在的な調節因子が明らかになりました。本研究は、頭蓋幹細胞Nicheの加齢に伴う変化に焦点を当てており、これにより頭蓋骨および頭蓋縫合の生物学意義に対する理解が深まり、再生医療およびアンチエイジングにつながる可能性があります。

 

論文情報

論文タイトル: A Single-Cell Transcriptomic Atlas Characterizes Age-Related Changes of Murine Cranial Stem Cell Niches
著者: Bo Li, Jingya Li, Bingzhi Li, Takehito Ouchi, Longjiang Li, Yu Li, Zhihe Zhao
雑誌名: Aging Cell

 

研究者プロフィール

氏 名:黄地 健仁(おうち たけひと)Takehito Ouchi
東京歯科大学 生理学講座 助教(最終著者・責任著者)

お問い合わせ先

所 属:東京歯科大学 生理学講座
職名・氏名:助教 黄地健仁
電 話:03-6380-9567
E – mai l:takehitoo@tdc.ac.jp