「高雅学風徹千古」

扁額

 東京歯科大学に掲げられている扁額。揮毫の主は“英世”すなわち野口英世である。年記には“大震後壱周年、秋日”とあり、関東大震災の翌年、在米の野口から贈られたものであることがわかる。当時、東京歯科医学専門学校であった本学は、鉄筋コンクリートの新館を残して壊滅状態にあった。
 たとえ壊滅的な被害にあっても“高雅で気高い学風は、決して失われることなく、永遠に続くであろう”と、恩師・血脇守之助の悲嘆を少しでも慰めるために、はるか遠国より贈られた野口による励ましの揮毫であった。

 世界的な細菌学者として有名な野口英世。彼の伝記を読んだ方は、野口が故郷で出会った東京から来た学者を頼って上京したというエピソードや、アメリカ留学の費用を出発前に使い果たしてしまった野口にお金を用意してくれた人物がいたことを覚えているであろう。そのどちらの人物も血脇であるばかりか、野口の生涯を物心両面で支え続け、“野口の精神的な父”と言われた人物が血脇であることは、あまり知られていない。
 

高山紀齋銅像前の血脇守之助(右)と野口英世(左)