概要
がん治療の大きな柱は手術、放射線治療、薬物治療であり、これを上手に組み合わせて、患者さんの治癒率を上げ、生存期間を延長することが目標であります。特に薬物療法は近年新しい抗がん剤の開発・導入が進み、がん治療の中で大きな比重を占めるようになってきました。
外来薬物療法室とは、患者さんが入院をせずに、一般の外来処置室では対応困難な副作用が予想されるがん治療に使用する点滴・注射治療を集中的に行う部門です。以前は強い副作用の対応や患者さんとご家族の不安、負担の軽減を考慮して入院して治療することが多くありました。しかし現在では、効果的で副作用の少ない治療薬の導入、副作用を軽減する薬剤(支持療法)の進歩、投与時間の短縮などが可能となり、多くの患者さんが外来で安全に治療を受けられるようになりました。対象の多くはがん患者さんであり、通常の抗がん剤(化学療法剤)だけでなく、それに準じた取扱いが必要となるホルモン治療薬、分子標的治療薬、さらに最近では免疫チェックポイント阻害薬などの新しい治療薬も施行可能です。また骨・関節病変、自己免疫性疾患に対する各種生物学的製剤の投与も行います。
当院の外来薬物療法室は、リクライニングチェア12床+ベッド1床の合計13床で治療を行っています。ここ3年はコロナ禍の影響で利用者数がやや減少しましたが、実際の運用面で予約枠が限界に達しており、外来での治療希望日程も余裕がありませんでした。2023年9月には、チェア数を増やし床面積も拡張した新しい外来薬物療法室に移転する予定で、より安全で快適な治療が可能となるはずです。
当院の外来薬物療法室では、患者さんに対して担当医だけでなく、専任の医師、看護師、薬剤師たちがチームを組み、各診療科の主治医と密接に連絡を取りながら、安全な薬物療法を追求しています。がん看護や心のケア、疼痛管理についての知識を有する専門・認定看護師と、がん薬物療法に関する専門知識と資格を有する薬剤師がわかりやすい患者さん向けの説明文書を用い、がん治療薬の副作用に関する説明を治療前に十分に行います。また、近隣の院外薬局とも患者情報の連携を密にしており、ご自宅に戻られてからも、安心して生活が送れ、治療が継続できるような体制をとっています。さらに当院では歯科大学附属病院のメリットを活かし、がん薬物療法前から口腔内のケアに積極的に取り組み、副作用として多い口腔内トラブルの予防、対処を行っております。当院は2008年より現在まで厚生労働大臣より「地域がん診療連携拠点病院」に認定され、地域の医療機関と連携し、質の高いがんの集学的治療の実施を目指しております。
外来薬物療法室スタッフ
当院の外来化学療法室には、各科の主治医以外に、専属の医師、看護師、薬剤師が協力して、多くの診療科からの外来治療依頼をうけています。スタッフ間で毎日ミーティングを行い、患者さんの身体状況だけでなく、日常生活でお困りのことも把握し、患者さんとご家族と共に考え解決できるようなサポート体制を整え、心地よい治療が受けられるようにしていきます。お困りのことがございましたら気軽にご相談ください。
外来がん患者指導
最近では外来で抗がん薬治療ができるようになり、その数は 年々増えています。当院では、患者さん自身が自宅で起こりうる副作用の予防をし、より早く適切な対応ができるよう、薬剤部で作成した説明書を用いて専門の薬剤師が説明を行っています。また、地域の保険薬局に対して、抗がん薬名や副作用の発現状況、治療経過などを記載した外来がん薬物療法連携シートやお薬手帳用のシールを用いて情報提供することにより、より安全な抗がん薬治療をめざしています。
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外来化学療法人数の推移
診療科別外来薬物療法室利用割合

2022年 診療科別外来薬物療法室利用割合