概要
がん治療の大きな柱は手術、放射線治療、薬物治療であり、これを上手に組み合わせて、患者さんの治癒率を上げ、生存期間を延長することが目標であります。特に薬物療法は近年新しい抗がん剤の開発・導入が進み、がん治療の中で大きな比重を占めるようになってきました。これまでがんに対する薬物治療は主に化学療法(抗がん剤治療)であり、強い副作用の対応や患者さんとご家族の不安、負担の軽減を考慮して入院して治療することが多くありました。しかし今日の医学の進歩により、副作用の少ない抗がん剤の開発・導入、さらに副作用を軽減する薬剤の飛躍的な進歩などにより、多くの患者さんが外来で治療を安全に受けられるようになりました。入院せず外来で化学療法を行う利点は、自宅で生活、仕事をしながら治療を続けることができ、精神的にも医療経済的にも負担が軽減されることです。外来のみで長期間の継続的な治療が可能となれば、病気の治癒・治療目標達成に大きく貢献するでしょう。
当院の外来薬物療法室では、新しい薬剤を積極的に導入し、副作用を軽減する投与方法や安全対策を充実させております。また患者さんに対して担当医だけでなく、がん看護や心のケアについての専門知識を有する認定看護師と、がん薬物療法に関する専門知識を有する認定薬剤師から治療内容や副作用、日常生活の注意点に関する説明を治療前に十分に行い、ご自宅に戻られてからも、安心して生活が送れ、治療が継続できるような体制をとっています。さらに当院では歯科大学のメリットを活かし、薬物療法前から口腔内のケアに積極的に取り組み、抗がん剤治療の副作用に多い口腔内トラブルの予防、対処を行っております。
当院の外来薬物療法室は2016年6月から新しいチェアを一部導入して、リクライニングチェアー12床+ベッド1床の合計13床からなります。全てのリクライニングチェアー、ベッドサイドには液晶テレビ、DVDをご用意するなどゆっくり快適に治療を受けることができるようになっています。しかし、外来化学療法施行数の増加に対応し、さらなる快適性と安全性の向上のため今後新に移転を計画中です。
また、患者さんに投与する抗がん剤の準備では、我々医療者に対しても曝露予防および安全性を保つため、安全キャビネットを使用して、薬剤師が注射薬剤の無菌調製(ミキシング)を行っています。
当院は2008年より厚生労働大臣より「地域がん診療連携拠点病院」に認定され、地域の医療機関と連携し、質の高いがんの集学的治療の実施を目指しております。患者さんが有効で安全な治療を受けていただけるように、院内に設置したがん薬物療法小委員会において、エビデンスに基づいた抗がん薬および投与方法(レジメン)の審査を行っています。
外来薬物療法室スタッフ
当院の外来薬物療法室には、各科の主治医以外に、専属の医師、看護師、薬剤師が協力して、多くの診療科からの外来治療依頼をうけています。スタッフ間で毎日ミーティングを行い、患者さんの身体状況だけでなく、日常生活でお困りのことも把握し、患者さんとご家族と共に考え解決できるようなサポート体制を整え、心地よい治療が受けられるようにしてゆきます。お困りのことがございましたら気軽にご相談ください。
外来がん患者指導
最近では外来で抗がん薬治療ができるようになり、その数は年々増えています。
当院では、患者さん自身が自宅で起こりうる副作用の予防をしたり、より早く適切な対応ができるよう、薬剤部で作成した説明書を用いて専門の薬剤師が説明を行っています。また、抗がん薬の投与スケジュール、投与量などを記載したお薬手帳用のシールを発行し、地域の保険薬局に対して情報提供をすることにより、より安全な抗がん薬治療をめざしています。
「レジメン一覧」はこちら
外来化学療法人数の推移
診療科別外来薬物療法室利用割合

2019年 診療科別外来薬物療法室利用割合