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治療の概要

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手術概要(脊椎)

脊椎の除圧術

脊椎の除圧術は硬膜管や神経根の後ろ側の骨を削ったり、移動させたりして行います。
当センターでは硬膜管の後ろにある椎弓を削り取ることが多いのですが、これを椎弓切除術と呼んでおります。(図5a)
これに対して削り取るのでなく椎弓を後ろにずらす方法を椎弓形成術と呼ばれます。(図5b)

図5a
図5a

図5b
図5b

脊椎固定術

また、脊椎の配列が大きく乱れていたり、脊椎で強い不安定性がある時は脊椎の位置を戻して固定することがあります。これを固定術と言いますが、多くの場合スクリューを使用します。(図6)

図6 第4第5腰椎間の後方除圧固定術(CBT法)
図6 第4第5腰椎間の後方除圧固定術(CBT法)

このスクリューは脊椎の椎弓根という場所に挿入することが多いのですが、この椎弓根の近くには大事な神経組織があります。また頚椎の手術の際は神経以外にも椎骨動脈という脳に血液を供給する重要な血管がスクリューに近接します。(図7)

図7
図7

固定術とはこのような大事な組織の周囲でスクリューを挿入しなくてはならないために、より安全で確実な手術が求められます。

手術概要(頚椎・腰椎・胸椎)

当院で行っている主な手術

① 筋温存型選択的椎弓切除術(首、腰)

正中アプローチを使用した椎弓切除術
正中アプローチを使用した椎弓切除術

われわれは頚椎の多くの病気に対して選択的椎弓切除術という方法を行っております。本法の利点は筋肉と筋肉の隙間を分けて展開をするために筋肉への侵襲が少ないこと、術前に手術する部位を特定してから手術を行うため(多くの施設では一律に手術部位を決めています。)、手術部位を絞りこみ、手術侵襲を低減できることです。日本の他の病院では椎弓切除術ではなく椎弓形成術という、頚椎の後方にある椎弓に何らかの手技を加えて残す手技を行うことが多いのですが、この方法では残された椎弓が神経を押さないようにするために椎弓切除術よりもかなり外側の骨を削る必要があります。そのためにより外側まで筋肉を切離する必要があるのです。また椎弓形成術では、残した椎弓が閉じて神経を押さないようにする細工が必要です。病院によっては、この細工のために高額なインプラントを使用することもあります。当院で行っている椎弓切除術は、周囲の筋肉の切離量、すなわち筋肉への障害を最小限にとどめつつ、神経の圧迫解除が可能で、術後の頚部痛や変形の危険性が低減し、異物で高額なインプラントも不要となります。その他に本法の利点としては、ポリネックのような装具が術後に必要なく、社会活動への復帰もすみやかであること。また椎弓に不安定な細工を行っておりませんので、スポーツ競技にも復帰することも可能です。プロレスに復帰しているような患者さんもおりますので、いかに術後にスポーツ復帰ができるかをご理解いただけると思います。
当院では頚椎症性脊髄症、頚椎後縦靭帯骨化症、頚椎黄色靭帯骨化症・石灰化症、頚椎症性筋萎縮症、頚椎椎間板ヘルニアなどの病気に対して本法を施行しております。
腰についても同様な方向を行い筋萎縮の予防に努めております。
腰については腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアなどで主に本法を用いております。

② 筋温存型椎間孔拡大術

傍正中アプローチを使用した椎間孔拡大術
(青山ら; Journal of Spine Research, 2012)傍正中アプローチを使用した椎間孔拡大術

われわれは筋温存型選択的椎弓切除術で使用されている正中アプローチ以外にも、傍正中アプローチを開発しました。本アプローチは頚椎の中央でなく外側の病変に対しても筋温存手術を可能にするものです。本法は頚椎症性神経根症、頚椎椎間板ヘルニアなどの外側の病変に対して有効なアプローチです。
青山の論文(Journal of Spine Research, 2012)では、本法で行った術後の筋萎縮率は平均0%であり、筋温存にすぐれている術式であることを明らかにしました。椎間孔拡大術自体は以前から行われている定評のある方法で、術後の上肢痛の軽減が安定して得られます。この筋温存アプローチと椎間孔拡大術を組み合わせることで、患者さんはより術後の痛みを軽減できるわけです。

本法は頚椎症性神経根症、頚椎椎間板ヘルニアに対して施行しております。

③ 筋温存型頚椎固定術(TEMPEST; Technique for muscle preserving stabilization)

第3頚椎から第7頚椎までの筋温存型後方固定術
(青山ら; 臨床整形外科,2013) 第3頚椎から第7頚椎までの筋温存型後方固定術

本法は筋温存型手術の応用編です。頚椎に不安定性があったり、変形を矯正する必要があるケースではインストゥルメント(生体内金属)を使った固定術が必要です。従来のインストゥルメンテーション手術、特に椎弓根スクリューの挿入では広範な筋肉の切除が必要で、術後の頚部痛の原因となっておりました。


上段の写真を見ていただくと広範な筋切離を行うと、椎弓根スクリュー(PS)後の筋肉は大分萎縮しているのが分かると思います。筋温存アプローチを2つ(正中アプローチ、傍正中アプローチ)使用することで固定術の際にも筋肉を温存することが可能になりました。下段のように筋肉を温存したTEMPEST後の頚椎MRIでは筋肉は良好に保たれており、筋温存にすぐれているのが分かります。本法の利点としては筋肉を残すことで骨への血流が残るため(筋肉を切離すると骨への血管も切離することになります。)、骨の癒合に有利なこと(骨は血流が豊富だと癒合しやすくなります。)、また死腔といわれる筋肉で覆われていない部位が術後に少ないため感染を起こしにくくなります。死腔と言われる部分には血液がたまり菌繁殖の温床になりやすくなります。また筋切離量が少ないので術後の頚部痛もすくなくなります。このため、固定術なのに術後のポリネックが不要なことが多いです。

本法は不安定性のある頚椎症性脊髄症、頚椎後弯症、頚椎すべり症、環軸椎亜脱臼、平山病(Flexion myelopathy)などで行っておりますが、固定が必要な各種病態に使用可能です。

④ 筋温存型脊髄腫瘍摘出術

筋温存型脊髄腫瘍摘出術

頚髄腫瘍(頚椎の神経に発生する腫瘍です)にも筋温存手術が行えます。本法も筋温存アプローチを2つ(正中アプローチ、傍正中アプローチ)使用しますが、筋肉のみでなく椎弓自体も残して脊髄腫瘍を摘出することができます。この方法の利点としては術後の頚部痛が少ないこと、頚髄腫瘍で時に起こる術後の髄液漏がおきにくいこと、万が一腫瘍が再発したときも骨と筋肉が術前と同じ場所に戻っているので、再手術の際も安心して手術ができるようになります。もし、骨の構造を壊した手術で腫瘍摘出を行うと、再手術時は健常部(手術で手をつけていない部位)から腫瘍に入っていかないと安心して腫瘍に近づけません。これに対して骨と筋肉を術前と同じ場所に本法を使用して戻しておけば、最初の手術と同じような部位から手術をすることが可能となりますので、術者は安心して小侵襲で手術が可能になります。また、頚髄の砂時計腫という巨大な腫瘍については頚椎の前方からのアプローチを追加することで腫瘍をより正確に摘出することが可能になります。特に大きい砂時計種は腫瘍が椎骨動脈と近接しており、血管損傷の可能性があります。また、頚髄の脊髄腫瘍の手術後には頚椎の変形が多いことが分かっており、特に小児例では術後変形が多くなります。本法を使用することで再発する可能性を常に考慮する必要がある小児の頚髄腫瘍に対しても有利に手術を行うことが可能になります。

本法は頚椎の脊髄腫瘍に対して行います。

⑤ BKP(Balloon Kyphoplasty)

骨粗鬆症性椎体骨折(圧迫骨折)は社会問題とも言えるぐらい多い高齢者の疾患です。骨粗鬆症により弱ってしまった背骨(椎体)が軽微な外傷で骨折してしまうのです。70代の女性の5人中1人に発生することが分かっております。(骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年)。この骨折の問題点は大きく2つあり、1つは椎体骨折が発生すると次の椎体骨折が出現しやすくなること、2つめはこの骨折が生命予後と関係している点にあります。まず、椎体骨折が1つあると次の骨折が発生する可能性は3倍になり、椎体骨折が2つあると次の骨折は10倍発生しやすくなります。(Lunt M et al; Bone, 2003)また1つ以上の椎体骨折があると死亡率が3割上がること(Kado DM et al; Osteoporos Int, 2003)、椎体骨折の数に比例して死亡する確率が増加し5個以上の骨折があると1つしか骨折がない時の2.5倍の人が死亡することが分かっております。(Kado DM et al; Arch Intern med, 1999)骨粗鬆症があればこれを治療し椎体骨折を起こさないようにすることが最も大事なことですが、一度起こってしまった時には、次が起こらないようにすることも大事なのです。当院では骨粗鬆症の専門外来を開設し椎体骨折の予防を計っていますが、骨折が出現したときにはより積極的な治療も行っております。骨粗鬆症椎体骨折の約20%は骨癒合しないことが分かっておりますので、この骨折には早期からセメントを使用した治療を行っております。その方法はBaloon Kyphoplasety (BKP)という小侵襲の手術で、5mm程度の小皮切を背中に2ヶ所行い同部から細いチューブを使用してセメントを注入して骨折部を安定化させます。出血少量で術後2−3日で退院が可能です。

当院で施行した第6胸椎圧迫骨折例

当院で施行した第6胸椎圧迫骨折例
(当院で施行した第6胸椎圧迫骨折例)

⑥MIST(Minimally invasive stabilization)による胸腰椎後方固定術

変形のある腰椎疾患で固定金属:インストゥルメンテーションを使用した手術が必要になりますが、筋肉の切離量や骨切除量が多めになり侵襲の大きな手術になりがちでした。近年ではイメージ下に小切開でスクリューを挿入する手技が開発されておりますので、当院でもこれを導入しております。最近はナビゲーションシステムと小切開スクリュー挿入法の併用によりイメージの使用量も軽減し、患者さんへの被曝量の軽減まで図るようになってきております。

本法は不安定性や変形のある腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアなどに行っております。

腰椎椎間板ヘルニアの新しい治療法:ヘルニコア注入療法

腰椎椎間板ヘルニアとは

背骨の骨と骨の間にある椎間板というものの一部(髄核)が飛び出して神経にあたり、足の痛み、しびれなどの症状が出る病気です。20~40歳代の男性に多く発症しますが、誰でも起こる可能性があります。
椎間板は特に、日常生活で負担がかかることも多く、何らかのきっかけで椎間板が飛び出すことがあります。背骨の後ろ側には骨に囲まれた空間があり、この中には脳と手足をつなぐ神経が通っています。ここに椎間板が飛び出して神経が押されると、その神経が作用する部位、特に足において痛みやしびれを感じたり、足が動きにくくなったりします。

腰椎椎間板ヘルニアとは
画像提供:科研製薬

腰椎椎間板ヘルニアの治療法

腰椎椎間板ヘルニアの治療には1.【保存療法】 2.【手術療法】 3.【椎間板酵素注入療法】の3つあります。

  1. 【保存療法】 痛み止めの服用や注射などを使います。症状を軽くすることを目的としています。
  2. 【手術療法】 手術により部分的にヘルニアを取りだし、神経への圧迫を取り除きます。
    手術時に1週間程度の入院が必要です。
  3. 【椎間板内酵素注入療法】(ヘルニコア)
    椎間板内に酵素を含んだ薬剤を直接注射して、ヘルニアによる神経の圧迫 を弱める方法です。患者さんの負担は保存療法と手術療法の中間と考えられます。 1泊2日or日帰りで出来ます。

椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア治療)について

新しい保存療法(手術以外の治療法)の一つとして椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア)があります。
ヘルニコアの有効成分コンドリアーゼは、ヘルニアの主成分である髄核の保水成分(プロテオグリカン)を分解する酵素です。通常、髄核には保水成分が豊富にあるため、水分を含んで膨らんだ状態にあります。これは、ヘルニアとなって飛び出して神経を圧迫している髄核でも同じです。この髄核に適切な量のヘルニコアを注入すると、コンドリアーゼによって髄核内の保水成分が分解され、水分による膨らみが適度にやわらぎます。その 結果、神経への圧迫が改善し、痛みやしびれが軽減すると考えられています。
全身麻酔の必要もなく、手術と比較して患者様への身体的負担が小さい利点があります。
ヘルニコアは腰椎椎間板ヘルニアを縮小させる唯一の薬剤で、全身麻酔の必要もなく、手術と比較して患者様への身体的負担が小さい利点があり、効果が期待できます。腰椎椎間板ヘルニアを患っている方はご相談ください。

椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア治療)について
椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア治療)について
画像提供:科研製薬

ヘルニコアの治療手順

  1. レントゲン台に横になり体の位置を調整します。 X 線でヘルニアのある椎間板を確認 しながら、針を刺す場所を決めます。
  2. 針を刺す位置を消毒します。
  3. ヘルニアのある椎間板内に針を刺し、 ヘルニコアを注射します。
  4. しばらく安静にします。 薬による副作用がないかなどの確認をします。
  5. (医師の診察を受け)問題がなければ帰宅できます* 。

*医師の判断で入院となる場合があります。
※過去にヘルニコアによる治療を受けた方は再度ヘルニコアの治療を受けることはできません。 また、以下に該当する方はヘルニコアの治療に注意が必要です。治療前に必ず医師に相談してください。

  • アレルギー体質の方
  • 「腰椎不安定性」の疑いがあると医師から言われたことがある方
  • 変形性脊椎症、脊椎すべり症、脊柱管狭窄症などヘルニア以外の脊椎疾患のある方
  • 骨粗鬆症、関節リウマチのある方
  • 妊娠中の方、妊娠している可能性のある方、授乳中の方

ヘルニコアの副作用

ヘルニコアの主な副作用として、一過性の腰痛や下肢痛、発疹、 発熱、頭痛がみられることがあります。 治療前のヘルニアによる痛みとは違った痛みや新たな症状が現れることがあります。

治療後の日常生活の注意点

  • 治療当日は入浴を控えてください。
  • 治療後 1 週間は腰に負担をかけないよう心がけてください。治療後は椎間板の周りの組織に変化が起こっています。日常生活やスポーツ開始時期など詳細は医師に相談してください。