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脊椎・頚椎・腰椎の解剖

脊椎の解剖

全身を動かす指令は脳から発信され、手足の末梢に伝わっていきます。このときに脳と手足を結ぶ大事な導線となるのが脊髄です。脳と脊髄は構造がやや似ており、神経細胞が中に入っておりますので、中枢神経といわれます。これに対して手足の神経を末梢神経と言います。この中枢神経である脊髄を守るのが脊椎の大事な役目の一つです。脊椎は頭側から頚椎、胸椎、腰椎、仙骨、尾骨に分かれております。(図1)腰椎の病気が一番多く、次に多いのが頚椎の病気ですので、腰椎と頚椎の解剖を少し詳しく見てみましょう。

図1
図1

頚椎の解剖

頚椎は頭側の2つを環椎(第1頚椎)、軸椎(第2頚椎)といい頭を左右に回す回旋運動をしやすい形になっており、他の5つと形が異なっております。(図2)

図2
図2

第3から第7頚椎までは図2のように似ている構造をとります。椎体と椎体を連結する部位には椎間板という柔らかい軟骨があり、頚椎が動くようになっております。脊椎は後ろ側に神経が通れる穴があり、この穴の連結で出来る管を脊柱管と言います。頚椎には脊髄が後ろ側に入っておりますので、同部で脊柱管の狭窄が生じると脊髄の障害が出現します。また図の様に硬膜管(硬膜で覆われた管で、中に神経と髄液が入っている)からでてくる神経根が分岐部付近で圧迫を受けると強い神経痛が出現します。(図3)

図3(日本整形外科学会のパンフレットより)
図3(日本整形外科学会のパンフレットより)

腰椎の解剖

腰椎は5つありますが、構造は頚椎と似ています。頚椎と同様に椎間板で椎体間を連結され、背中側に神経が通る脊柱管があります。頚椎との違いは硬膜管の中に脊髄ではなく、馬尾神経と言われる末梢神経が入っていることです。腰椎の脊柱管が狭くなり馬尾神経全体が押される と両下肢の症状だけでなく、頻尿などの膀胱の障害や便秘などの直腸の障害も出現してきます。硬膜管から分岐する神経根が押されると頚椎と同様に強い神経痛が出現します。特に腰椎の下位に位置する神経が坐骨神経になっていくので、腰椎の神経根が押されると坐骨神経痛がよく出現します。(図4)

図4
図4

主要な頸椎疾患の説明

① 頚椎での神経障害について

神経障害の症状は2つに大別されます。1つめが神経の本幹である脊髄の圧迫により出る脊髄症状(頭や顔を除いた全身の症状が出現します。)、2つめが神経の枝である神経根の圧迫により出現する神経根症状(神経の走向にそった局所症状が出現します。)です。頚椎での脊髄の圧迫による症状(脊髄症状)は手のしびれに始まることが多いです(初期)。その後、手による細かい動きが障害され(巧緻運動障害)、箸が使いにくくなったり、字が書きにくくなったり、細かいボタンが留めにくくなったり、ものを落としやすくなったりします(中期)。その後に下肢の症状が出現し、特に階段の下りなどで足が突っ張ったりして手すりが必要になったり、平地でもまっすぐ歩きにくくなったり、痙性歩行という下肢が突っ張った感じになることが特徴です(進行期)。足の症状が出現すると、排尿障害が出現することが多くなり、特に頻尿が多くなります。男性に便秘はまれですが、脊髄症(脊髄症状のでる時の病名を脊髄症と言います。)が進行すると便秘を訴える方も多くなってきます。進行した脊髄症の人は体幹(おなかなど)や下肢の感覚障害を訴える方も多く、お風呂に入っても暖かく感じないと訴える方もいます。さらに脊髄症が進行すると、両手のみならず、両下肢のしびれが出現します。最終的には手足の運動ができなくなり寝たきりになってしまうこともあります(末期)。脊髄症は中期ぐらいまでに見つけることが大事で進行期になるとせっかく手術しても改善がしにくいことも多くなります。中期の症状である巧緻運動障害を見つけるために、10秒間手をグーパーする10秒テストが有名です。10秒間で20回グーパーができないときは巧緻運動障害を疑います。また、指を伸ばす運動がゆっくりしかできないとき、パーの状態で指の間をしっかりと閉じることができないとき(フィンガーエスケープサイン)も脊髄症を強く疑います。
神経根症状の特徴は痛みです。腰、腰椎からの痛みとして、坐骨神経痛という殿部から足に放散する痛みが有名だと思います。首、頚椎では、この殿部に相当するのが肩甲骨の裏となり、頚椎からの神経痛(神経根症状)は肩甲骨の裏の痛みが多いです。さらに肩から手へ放散する痛みを訴えると、典型的な神経根の圧迫による神経痛と言えます。この神経痛は押される神経によって放散の仕方が異なり、肩から腕の外がわを走り親指に放散するものや、腕の後ろから中指に放散するもの、腕の内側から小指に放散するものに大別されます。親指側の方が首の頭よりの神経の障害、小指側の方が首の下側の神経の障害をあらわします。肩甲骨の裏の痛みも上であるほど、上側の神経の障害をしめします。神経根症(神経根症状が出るときの病名を神経根症と言います。)は自然に軽快することが多く、痛みがなくなってからしびれに移行し徐々に改善するのが典型例です、ただし痛みがなくなったあとに麻痺が出現する例も時にあり、障害が強いときは手術を検討致します。

② 頚椎症、頚椎症性脊髄症、頚椎症性神経根症について

頚椎症とは加齢により椎間板や関節が痛み、頚部痛が出現するときに使われ、神経の症状が出現していない時に使用される病名です。治療は投薬、安静などの保存療法になります。この軽症の頚椎症からどのようにして重症な病気に移行していくかを説明します。基本的に20歳以下では椎間板は水分を含んだ張りのあるゴムまりみたいな組織です、加齢変化により水分を含むことができなくなり、椎間板は固くなり、中の線維も切れてきてしまいます。このように椎間板は加齢変化で張りがなくなったグジュッとしたゴムのようになってきてしまい、高さを保つことができなく背の低くなる原因ともなります。このように加齢変化をうけた椎間板ではぐらつきがどうしても出現してくるのです。この椎間板部での不安定性を解消するために出現するのが椎間板周囲の骨のとんがり(骨棘)です。骨棘の発生により椎間板周囲の支えが増えることで椎間板部での不安定性が解消されるのです。これは膝関節などでも言えることで軟骨が減って骨同士が近づいてくると関節の周囲の靱帯はたるんで関節は不安定になります。この不安定感を解消するために膝の辺縁にある骨が骨棘を形成し膝関節を安定化させるのです。このように痛んでしまった椎間板はたるんでいるために容易に後方や側方へ突出していきます。あるいは椎間板の高さが減じることにより、頚椎の後方にある黄色靭帯もたるんで前方の神経を押しやすくなったりします。さらに黄色靭帯自体も加齢により分厚くなって神経の圧迫を来しやすい状況になってきます。また神経根の出口も椎間板の高さの減弱により塞がれてくるのです。このように頚椎は加齢変化によって神経の通り道が狭くなる運命にあります。ただし、全員に神経障害が生じるわけではなく、生まれつきの神経の通り道の大きさが神経の運命を左右すると言えます。つまり、生まれつき神経の通り道が狭い人は、加齢変化によって神経障害が出現しやすいと言えます。生まれつき神経の通り道が狭いときを発育性脊柱管狭窄といい、日本人に多いことが分かっております。体の大きい欧米人は脊柱管が広い人がおおく脊柱管狭窄は稀な病気です、神経の太さ自体は人種差があまりないので骨が大きい欧米人は脊柱管狭窄になりにくいので恵まれているといえます。上記のような加齢変化による変形により脊髄症状が出現する時を頚椎症性脊髄症、神経根症状が出現する時を頚椎症性神経根症と言います。実際の臨床の場ではこの2つが組み合わさっていることもしばしばあります。頚椎症性脊髄症は病状の進行が緩徐なことが多く、脊髄症の中期例では手術になることが多いです。この頚椎症性脊髄症は高齢者になると急性増悪する例もあり、早めの手術で回復する事が多いので、早めのそなえが大事な病気です。これに対して頚椎症性神経根症は急に発症することが多く、神経根症なのでとても痛がります。ただし、当初の症状が強いのに反して、ほとんどのケースで症状は、保存療法のみで回復していきます。3ヶ月以上も痛みが改善しないときや、上肢に麻痺が出現する一部の例では手術を行っております。

③ 頚椎椎間板ヘルニア

痛んでしまった椎間板が神経障害の原因となったときにつける病名です。高齢者になると骨の変形(骨棘)などが多くなり、椎間板単独で神経障害の原因となることは少なくなります。このため頚椎椎間板ヘルニアは比較的若い方がなる病気です。単純な加齢変化や急激な椎間板への負荷などによって椎間板が痛むことからこの病気は始まります。したがって、椎間板が痛みますので椎間板症による頚部痛が初発症状です。その後はヘルニアの出っ張る場所により神経根症あるいは脊髄症が発症します。これらの症状は頚椎症性神経根症や頚椎症性脊髄症と同様です。治療方法も同様で、神経根症状は保存療法で軽快することが多いです。ただしヘルニアによる神経根症状はヘルニアによる反応性の神経根炎も合併するため、当初は激烈な痛みを訴えることが多いです。患者さんに腕をもぎってほしいと言われることがしばしばあります。大きいヘルニアの時は脊髄症になる場合があり、この際は手術も検討されます。一般的には前方固定術という手術を行うことが多いのですが、当院では選択的椎弓切除術を行っております。本法は後療法が簡便で社会復帰も早く、隣接椎間障害という長期経過で出現する再狭窄を考える必要がなく、前方固定後に問題となることがある、声や食事の障害あるいは咽頭の違和感など、を回避できる方法です。

④ 頚椎後縦靭帯骨化症

頚椎を構成する靱帯で重要なものは3つあり、頚椎の前方を連結する前縦靭帯、頚椎の椎体の後方を連結する後縦靭帯、頚椎の椎弓前方を連結する黄色靭帯があります。いずれも加齢変化により骨化する可能性があるのですが、特にこの骨化が著しい場合を靱帯骨化症と呼んでおります。頚椎では後縦靭帯が骨化することが多く、この病気の機序が完全に分かっていないために骨化を止めることができません。また手術後の合併症の発生なども多く、難病指定が受けられる要因となっております。頚椎症よりも10歳程度若い5−60代ぐらいの方が手術になることが多い病気です。この病気は日本人に多いことが分かっており、その要因は様々推測されておりますが、まだ不明です。症状は骨化する場所と大きさにより変わってきますが、ヘルニアと同じような場所に腫瘤病変として骨化が存在しますので、外側に骨化があれば神経根症、真ん中で大きな骨化があると脊髄症になります。治療方法は前述の頚椎症性脊髄症、神経根症、頚椎椎間板ヘルニアと同様に筋温存型選択的椎弓切除術と椎間孔拡大術の組み合わせを第1選択として行っております。