本文へ
わたしたちのからだの中では生きていくために数多くの化学物質がダイナミックに反応しています。口腔組織は絶えず外からの刺激や侵襲を受けながらもそれに打ち勝ちながら重要な営みを続けています。生化学はこれらの体や口腔組織での化学物質による生命現象を分子と生物学・組織学などと結びつけながら明らかにしていく分野で、歯科臨床医としてからだの営みを理解しながら医療に携わるための基礎的な学問分野です。 生化学講座では、現在、1)口腔内異常を伴う遺伝的疾患をもつ患者由来のiPS細胞を作製し、細胞レベルでの病態解明を目指す、2)骨や歯の発生段階における重要な遺伝子発現と機能の検討、といった研究を行っています。
生化学の授業では、2学年で生体を構成する物質やその代謝について学び、3学年では口腔内の生命現象を生化学的・分子生物学的・細胞生物学的な観点から学び、歯科臨床医学の基礎を学びます。生化学の概念もその他の自然科学と同じように、実験とその考察の繰り返しで構築されており、実習ではその理念を理解するために、自ら注意深く実験を立案し、正確に実験を行い観察し、そのデータを自ら考え解析する力をつけます。また、バイオインフォマティックスの基礎を理解します。
1.ヒト疾患特異的iPS細胞の樹立と機能解析 ヒト疾患特異的iPS細胞の樹立は病態解明、治療法の開発、薬剤の選択など大きな貢献が期待されています。生化学講座では、現在、鎖骨頭蓋骨異形成症(CCD)、基底細胞母斑性症候群(Gorlin症候群)、唇顎口蓋裂、McCune-Albright症候群などの口腔内異常を伴う遺伝的疾患を対象に、それぞれ複数症例からiPS細胞を作製し、機能解析を行っています。特にCCDでは4症例のiPS細胞を作製、うち1症例は遺伝子変異を修復したiPS細胞を作製し、CCD-iPS細胞の骨芽細胞分化の遅延および骨再生能の低下を確認しました。 2.間葉系幹細胞から骨細胞への分化過程における遺伝子発現の解析 骨髄間葉系幹細胞を採取し、骨分化誘導を行うことで、骨細胞への分化過程における遺伝子群の役割およびメカニズムの一端を明らかにします。 これらの研究は生化学講座の専任教員のほか、本学臨床系講座や口腔科学研究センター、東京歯科大学市川総合病院、東京大学との共同研究によって行われています。