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当講座は、大学における臨床講座の使命としての3つの柱、「教育」「臨床」「研究」のいずれに対しても、医局員一同が情熱を持ってあたっています。我々の専門分野は歯内療法学です。歯内療法とは、歯髄および根尖部周囲組織の疾病や傷害に対する予防や診断、およびその処置法を専門とする臨床科目です。歯髄および根尖部周囲組織の病変を理解するためには、歯に及ぼす種々の病的刺激の原因とその影響に関する知識、各種検査法を利用した正確な診断を下す能力、適切な処置法の選択ができなければなりません。歯内療法処置は "リ-マ-を持たない日は無い"とまで一般化している反面、しなやかで優れた根管追従性を有するニッケルチタンファイルや、根管の深部まで直視できる手術用顕微鏡の応用など、高度に専門化された領域を合わせ持っています。
歯内療法学の系統講義ならびに基礎実習は、学部学生の比較的早い時期に開始されます。系統講義は歯の硬組織疾患、歯髄および根尖性歯周疾患の診断ならびに処置を中心に、一般歯科治療の要とも言うべき諸項目に関する知識の習得を目標に実施されます。特に手技に関しては、処置過程での指導を徹底することが重要であり、基礎的な手技を繰り返し実施することによって、早期に治療イメ-ジを確立することを目標としています。また、卒後の医局員に対しては、講座内でカリキュラムを策定し、日本歯科保存学会、日本歯内療法学会、日本顕微鏡歯科学会等関連学会の認定医、専門医の資格取得はもとより、高度な臨床に直結できる能力の育成を目標に指導を行っています。
私共の歯内療法学講座は、これまで数多くの薬剤、材品を創出してきました。講座の産学一体での研究・開発の歴史と研究成果は、多くの製品となって歯科臨床の現場に提供されています。近年の開発材品では、酸化マグネシウム系根管充填用セメント「MGOシーラー」、移植・再植用の歯牙保存液「ティースキーパー・ネオ」、シアノアクリレート系裏層材「ニッシン・ベースライナー」などがあります。これらの開発研究を含め、当講座では組織形態学的研究を中心として行ってきましたが、近年は微小焦点X線CTを用いた根管処置効果の非破壊的三次元的形態解析や、根尖性歯周疾患に関与する微生物学的検索や関連する遺伝子解析も継続的におこなっています。さらに今後は関連分野にも広く情報発信できるような研究活動の展開も考えています。
当講座の専任教員は、東京歯科大学水道橋病院、千葉歯科医療センターの保存科において、高い専門性の治療技術を要する臨床にたずさわっています。当講座は、本邦の歯科大学で最も早く歯内療法処置へのマイクロスコ-プ(手術用双眼実体顕微鏡)応用術式を導入しました。この精緻な顕微鏡下での治療手法を活用して的確な診断を行うと共に、いわゆる難治症例の歯の内部に対する非外科的な治療(根管治療)、歯根周囲の外科的治療のいずれにも優れた臨床成果をあげてきました。本邦の先進医療「コーンビームCTと歯科用顕微鏡を併用した歯根端切除手術」は、東京歯科大学千葉病院保存科でいち早く先進医療としてとりいれられ、現在では保険診療に導入されています。「出来る限り歯は抜かないで保存すること」、これは多くの患者さんの希望するところであり、そのために我々専門医が日々努力をしています。