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法歯学講座は、昭和39年(1964)歯科大学における我が国最初の法医学研究機関(歯科法医学研究室)として開設されました。事件、事故、災害発生時には、死因究明を目的とした遺体の検視・検案が行われますが、その際に個人識別を行う必要が有ります。個人識別とは事件や事故の加害者及び被害者が誰であるのかを特定する事ですが、個人識別に際しては顎顔面領域から得られる情報が非常に有用であり、特に歯科領域の知識が応用される事から、法歯学の社会的な存在意義は大きいものと考えます。 法歯学は生体、死体、物体、現場、書類などを対象とし、歯科治療痕跡、骨や歯の一部、顔の映っている写真、防犯ビデオ映像、DNA型等から各種検査を行います。これらの情報から鑑定を行う法歯学は、極めて社会と深い関わりを持った学問です。
法歯学・法人類学講座では、主にヒトを対象とした広範な個人識別情報を得るための研究を行っています。さらに動物実験を併用した人獣鑑別に関する研究、法歯学的知識を応用した死後経過時間推定法の開発など幅広い研究を行っています。さらに我々の講座では、実験室で行う研究だけではなく、フィールドワークも積極的に取り入れております。 現在はこれらの研究に加え、防犯ビデオカメラからの個人識別、画像を用いた異同識別、歯科治療痕からの個人識別、行政より依頼されてのDNA型鑑定を用いた戦没者遺骨返還事業などを日々行っています。
法歯学分野では、第4学年を対象として、関係法規、頭蓋骨を用いた人種・性別・年齢の鑑別法、創傷、死後変化、大規模災害時に歯科医師の大事な業務の1つとなる死後記録の作成などについて講義を行っています。また法律により保証された歯科医師の権利及び義務について話すと共に、医療事故・医事紛争の実際を取扱って学生に医療従事者としての自覚を促す教育を行っています。 法人類学分野では、第1学年を対象として、全身の骨を対象とした形態学的な知識や、日本人の持つ死や遺体に対する独自の精神的な文化について等、医療従事者となるのに欠かせない専門的知識の習得を支援しています。 我々は様々な場面で歯科医学の知識を社会に還元できる教養豊かな歯科医師の育成を目標とした教育を行っています。