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東京歯科大学東京歯科大学短期大学

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顎骨疾患プロジェクト

コア研究

コア研究

口腔感染制御部門

責任者:小児歯科学講座    櫻井 敦朗
課題名:疾患発症リスクの低い口腔内細菌叢の探索と育成

ヒトの各組織でそれぞれ構成されている細菌叢は健康な状態(ホメオスタシス)の維持と密接に関わっており、こうした細菌叢が撹乱されることは何らかの疾患発生に大きく影響すると考えられている。また、乳幼児期は口腔の細菌叢の形成時期に当たる。生涯にわたって口腔疾患の発生リスクの低い状態を維持するためには、小児期に適切な食習慣や生活習慣を通じ、 正しい口腔内細菌叢を構築するための環境作りが、健全な顎口腔機能の育成に重要であると考えられる。小児齲蝕の場合、古くからどのような生活習慣が発生リスクを増大させるかという疫学調査が多く行われてきたが、ある食習慣や生活様式がどのようにバイオフィルムの状態、本来あるべき口腔の細菌叢を変化させ、ど のように細菌由来の病原因子の発現変化をもたらすかについてはほとんど明らかでない。
本研究では、 口腔内細菌叢の形成過程にある小児(概ね3歳まで)を対象に、口腔内試料を採取して口腔内細菌叢に関するデータを取得する。また、 食習慣や生活習慣によってどのように影響を受けるのかを明らかにする。さらに、齲蝕をはじめとして口腔疾患の発症リスクが高い小児に対してどのようなアプローチを行えば、口腔内細菌叢の 健全化が計れるのかについても検討を加える予定である。アプローチの方法としては、食生活や口腔衛生指導だけでなく、プロバイオティクス効果を有する食品やタブレットの利用、酸産生能の高い細菌種の増殖を妨げるキシリトー ル等の利用を考えている。

象牙質再生部門

責任者:生理学講座    木村 麻記
課題名:細胞内シグナリングによる象牙質石灰化機構

象牙芽細胞は象牙質形成細胞であり、生涯にわたる生理的な象牙質と生体内外からの刺激に伴う第3象牙質を形成する。第3象牙質形成は、歯の硬組織疾患による1)象牙質表面への外的刺激による反応象牙質形成と、2)象牙芽細胞死(細胞障害)によって歯髄幹細胞から象牙芽細胞が分化誘導されて生じる修復象牙質形成に分けることができる。 我々は機械刺激感受性センサータンパク質活性化で増加した細胞内Ca2⁺が象牙芽細胞膜に存在するCa2⁺排出系(Na⁺-Ca2⁺交換体)により石灰化前線に排出されることで反応象牙質が形成されることを報告してきた。加えて、象牙芽細胞内Ca2⁺シグナルは細胞内cAMPによって調節される可能性も示唆している。しかしながら、cAMP誘発性Ca2⁺シグナルの反応象牙質形成に対する作用、cAMP誘発性Ca2⁺シグナルとCa2⁺排出系の機能連関は不明である。一方、遺伝子改変マウスで象牙芽細胞を死滅させると、象牙芽細胞が「再生」した後に新たな象牙質(修復象牙質)形成が生じるが(溝口ら、 私信)、象牙芽細胞分化マスター因子は未だ特定されていない。そこで、本研究は、1)象牙芽細胞における詳細な細胞内cAMPシグナル経路と細胞機能に対する役割、2)PMCA・細胞内cAMPおよびcAMP誘発性Ca2⁺シグナルのカップリング機構、3)象牙芽細胞分化マスター因子を明らかにすることで、反応・修復象牙質を再生する新規象牙質形成促進剤の創薬基盤を確立することを目的とする

生体医工学部門

責任者:組織・発生学講座   北村 啓
課題名:組織の構造形成に関する形態学的・工学的手法を用いた新たな研究

生体医工学研究部門では、材料工学的手法に基づいた生体組織の解析を行う。すなわち、組織学的な三次元的構造解析、生体力学解析、材料工学的解析の3点を主軸に研究を遂行する。上記の研究を行うことにより、筋や神経の生み出す力学的環境に対する骨の形態・質・量の変化が新たな着眼点から解明することができ、骨の再生を促すバイオマテリアル創製と臨床応用に向けたファブリケーション技術開発を目指す。
1. 組織学的な三次元構造解析
近年、生化学/分子生物学的な研究により、細胞の再生機能の一端が解明されつつある。しかしながら、その集合体である組織・器官を自在に成形するには至っておらず、生体内での三次元的なモデリング機構の解明が必要である。そのため、胎生期における骨/軟骨の経時的な成長過程を組織学的手法で観察し、得られたデータを三次元立体構築し可視化する。この結果から正常発生の組織形状をつかさどる因子を特定する。さらに、その要因を排除した実験モデルを作製して同様の実験を行い、形態的な骨形成能の低下を評価する。また、形成された骨の強度も評価対象とするため、骨質(骨の構造的特性、骨基質、石灰化度、骨代謝回転、マイクロクラック)に焦点を当て、材料工学的手法と組織学的手法を合わせて検索を行う。マイクロCT画像を用いた骨形態計測、微小領域エックス線回折法を用いた生体アパタイト(BAp)結晶配向性解析、SHGイメ ージングを用いたコラーゲン線維の走行異方性、骨細胞動態の検索など、骨の質的因子の変化について研究を進める。
2. 生体力学的研究
顎骨は、歯を介して荷重が骨内部にまで伝達する特殊な骨である。体幹四肢の骨は加齢にともなって骨量が減り、骨質も低下する。一方、顎骨は歯の影響を強く受けるために加齢の影響は軽微だが、歯を失った際には大きく吸収する。顎骨の恒常性を維持するためには、歯や補綴物が顎骨に与える影響について解明する必要がある。骨系細胞の細胞動態、骨形成に関与する細胞の分化能から、骨質解析、さらには三次元有限要素法をはじめとする生体力学解析など、顎骨と力学環境を関連付ける様々な因子について解明し、骨再生などの臨床応用に向けた取り組みを行う。本年度は、高負荷がかかる様々な骨/軟骨組織について検索を行い、力学環境に関する因子との関連性を明らかにするため、組織形態学的解析、骨質解析、生体力学的解析を進めていく。
3. 材料工学研究
顎骨疾患の治療には、プレートやインプラントなど様々なマテリアルが不可欠である。 材料の材質のみならず、ミクロ/ナノスケールにおける微小構造が、生体に大きな影響を与えることが明らかとなっており、材料工学と医歯薬学のコラボレーションが重要な課題となっている。骨に適合するだけでなく、骨量や骨質を改善するバイオマテリアル開発を行う。さらには、バイオマテリアルの安全性に関係する腐食試験、溶出試験、生体適合性に関与する表面分析、表面改質を行う。