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2025.09.30
2025年5月15日(木)から17日(土)、キッセイ文化ホールおよびエア・ウォーターアリーナ松本(長野県)にて開催された第79回NPO法人日本口腔科学会学術集会において、生理学講座の倉島竜哉大学院生が若手優秀ポスター賞を受賞した。受賞演題は「象牙芽細胞における細胞内アラキドン酸カスケードを介したPiezo1-TRPV1/TRPA1クロストーク」であった。
象牙質知覚過敏症に代表される、冷水や甘味刺激などで生じる歯の痛み(象牙質痛)は、象牙芽細胞に発現する機械感受性イオンチャネルであるPiezo1チャネルおよびtransient receptor potential (TRP)チャネルが活性化した結果として生じることが明らかになっている。これまでの同講座の研究で、象牙芽細胞の機械感受性応答のシグナル最上流にPiezo1チャネルが存在し、TRPチャネル活性をその下流シグナルで制御することが示唆されていたが、そのシグナルの詳細は明らかにされていなかった。今回の研究で、象牙芽細胞への機械刺激が、Piezo1チャネルの活性化に続く細胞内アラキドン酸カスケードのシクロオキシゲナーゼ代謝経路を介して、TRPV1チャネルを持続的に、TRPA1チャネルを一過性に活性化することで、象牙質痛が発生する可能性が示唆された。本研究は、象牙質知覚過敏に対するNSAIDs(シクロオキシゲナーゼ阻害薬)の有効性を示した臨床研究を、基礎研究の観点から裏付けるものである。今後、NSAIDsが象牙質知覚過敏症に対する治療薬となり得るかもしれない。
倉島大学院生の今回の受賞は、2025年3月に開催されたAPPW2025でのGraduate Student Presentation Awardに続くものであり、複数の国内外の学会で評価されたことは名誉なことである。今後も生理学講座の研究成果がさらに発展し、歯科医療の進歩に貢献することが期待される。
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